2001年6月21日木曜日 紫陽花の花びら一枚一枚がそのことを知らないように、海は自分が球体の一部であることを知らない。足首のない杭が桟橋を歩くと、コツコツ。ゆるやかな傾斜の果
てにある朝が、少しずつ時間を食べている。
大森の動物病院まで、わたしと息子のバクは車に乗せられてワクチンの注射を打ちに行った。男主人Hは事故を起こすわりに運転が上手い。女主人Dは助手席で靴を脱いで、握り飯を食べる。いつもならよだれを垂らすところだが、わたしたち親子は大の車好きである。わたしはずっと後部座席に座り、窓から首を出して風に吹かれていた。小さな橋を渡るとき、水の匂いがした。ついうっとりとして目を細め、自分の系譜を遡行してしまう。わたしは鮭犬かもしれない。男主人Hの枝分かれした先祖に、江戸時代に酔っぱらって橋から落ちて死んだ神主がいたという。水面
に映る肉をくわえた自分を見て、うっかり吠えて肉を川に落としてしまうほど馬鹿じゃないが、わたしもビールが好きだから気をつけよう。
体重計付き診察台に乗ったら、わたしは38キロだった。うん、減量
はなんとかうまくいっているようだ。そんなことより心配なのが息子バクの体重だった。なんと44キロ。女主人Dを越えて、あと4キロで男主人Hと並んでしまう。この際、二人して万歩計を買ってもらおうかな。
ハドソン |