本来は、上領亘・白石元久・稲葉雅巳の3人のスペシャリストから成る音楽プロジェクト、CROW。彼等の構築する音楽世界は、一見したところ少々恐ろし気で複雑です。でも、リーダーの上領君が「何か一緒にやりましょう」と誘ってくれたとき、これはきっと面白いことになるという確信はありました。
まずはゲストとしてliveに参加。そしてそのまま自然な形でメンバーとしてすんなりおさまってしまうまで、それほど多くの時間を要しませんでした。
このファーストアルバムには、3曲に楽曲作りと歌で参加しています。
残念ながら今では活動休止となったプロジェクトですが、当時を思い出しながら楽曲解説を書いてみました。
2.野ばら |
作詞:Darie |
作曲:CROW |
4.Cardiac Sound |
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作曲:CROW |
10.Half Awake And Half Asleep |
作詞:上領亘・Darie |
作曲:CROW |
2.野ばら
CROWとしてのライブを何度か経験し、次なるステージアップをメンバー全員が意識していた頃、この曲が生まれました。
びっしりと構築されたサウンドに身体ひとつで向かいあったとき、科学反応のごとく立ちあらわれる「何か」を瞬時につかみ取る・・・私にとってのCROWでの活動はこれに終始します。
となった場合、歌うべきメロディーも物語りも、悩むことなくスルスルと出てこなくては嘘なわけでして、音楽をやっているよりも、心の向くべき方向に意識を集中することの方が多いのです。
ハードなサウンドとタイトルにはギャップがあるようにも見えますが、これもスルスルと出てきてしまったのですから、仕方ありません。自分ではコントロールできない創作の衝動は、何よりも得難いもの。能動的に作るというよりは「授かる」という感覚が近いでしょうか。
そして、これは大変に幸運なことですが、メンバー全員がお互いの作業を決して否定せず、まずはすべてを受け止めるという大らかな姿勢が全編に貫かれています。この不思議な大らかさが根底に流れていたからこそ、可能なコラボレーションだったと言えるのでしょう。(しみじみ〜)
4.Cardiac Sound
「心音」の名の通り、プリミティブで、どことなく怪しい儀式や呪詛の香りがするサウンド。官能や熱狂、融点、陰陽、聖女、悪魔、光・・・。いろんなイメージを身体に潜ませながら情動にまかせて歌っています。
言葉は全編造語ですが、自分の喉と相談しつつ慎重にメロディを組み立てました。喉と相談といっても、音域や声量などポテンシャルに関する相談ではなく、私にとっての喉の快感を感じるか否かというポイントが重要だったのです。
歌入れのときには、上領君の的確なディレクションに支えられて、なんの迷いもなくテンションを維持。私がやりたかったことと、彼等の目指すものが、ひゅんっ、ひゅんっ、と交わる瞬間に幾度も恵まれた、とても幸せな録音でした。
10.Half Awake And Half Asleep
サウンドデザインを担当している白石君からCD-Rが送られてきた時点では、アレンジはほぼ完成しており、上領君のエフェクト処理されたVocalが入っていました。数日後の録音までに私は自分がなすべきパートを考えておかなくてはなりませんでしたが、例によって、何を歌ってもよいとのお達し。歌詞も完全におまかせ状態。こんな楽しい宿題も珍しいですね。
まずはリラックスし、頭をからっぽにして曲を聴き進むうちに、ひょっこり「狐」のイメージ。それを大切にしながら私が歌うパートのメロディーを考えて譜面に書きとめ、そこからあとは、連想ゲームのように狐玉、美少年、交歓・・・と妄想を膨らませて歌詞を作成。ざっと書いた日本語の歌詞を「音」の間合いやリズムを壊さないように英語に書き直し、完成。
後日、白石君宅のスタジオで歌入れをした時、スッと気持ちが集中して、とてもすんなり歌えたことに我ながら感動したのを憶えています。
ブリッジ部分のトラッド風味な輪唱は造語です。
タイトルは、日本語に訳すと「夢うつつ」。
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